8月8日9時46分配信 ITmediaエンタープライズ
6月の下旬にあるEC企業からの依頼で、米リンデンラボが運営する仮想世界サービス「Second Life」の現状や今後の展開について、その企業の幹部や社員の人たちに筆者の考えをお話させていただく機会があった。まだ確たる方向性も見えていない新しいテーマについての話であるとはいえ、インターネットでの商品販売やマーケティングを本業にしている人を相手に話をするのはいささか緊張した。
Second Lifeについては以前に少し取り上げた。ちょうどそのころが日本で最初に話題になった時期であり、それまで仮想世界とは無縁と思われた企業にもその存在が知られるようになっていた。それからほぼ半年が経過した。
●登録者の本当の姿は…
Second Lifeの登録者数は、この半年間も拡大を続けている。その数はすでに865万人を超えた(8月7日現在)。
ある報道記事で、「数百万人がハマる仮想世界」という見出しでその過熱ぶりを伝えようとしているのを見かけたことがある。しかし、この数字のとらえ方には注意が必要だ。
Second Lifeの公式サイトには、このサービスに関する最新の統計が掲載されている。それによると、住民登録(利用登録)を行った人の数は確かに865万人に上る。だが、実際に利用している人の数は、かなり少ないように思える。
例えば、ある時点から過去60日以内に1度でもこのサービスを利用した人は登録者全体の20%前後、ある時点で実際にこのサービスをオンラインで利用している人の数は全体の0.5%程度である。筆者の観察ではこうした比率はここ数カ月間ほぼ一定している。これは何を意味するのだろうか。
Second Lifeが大のお気に入りで、早くから熱心な活動を続けている人は少なからず存在する。彼らの多くが自身の活動をブログなどで発信しており、それを読んでみると、本当に毎日この世界に参加し、自分なりの活動をせっせと続けていることが分かる。こうしたヘビーユーザーが一体何人いるのかは不明だが、少なくとも(Second Lifeのトップページ上で)適宜更新される「現在オンライン中」の人の中に、一定の割合で含まれていることは間違いないだろう。
逆に、興味を持って登録してはみたものの、何らかの理由により、1回ないし数回ログインしただけで参加をやめてしまう人の存在が多いことは、容易に想像がつく。サービス利用をあきらめる理由は、内容に対する期待と現実のギャップや、マシンやネットワークのスペック不足といったものまでさまざまだろう。問題はその数である。
Second Lifeを楽しむ上では、参加者の主体性や創造性が重要である。一方で話題性が先行している現状、あるいは数カ月で急拡大した登録者数といった点を考えるに、参加しなくなった人の存在は決して少なくないはずだ。公式統計で発表されている、有料会員の登録者数や仮想通貨の利用者あるいは利用金額の動向などから見て、このサービスを定期的に利用している人は現時点でもせいぜい十数万人レベルと考えるのが妥当だろう。決して登録者全員がハマっているわけではないのである。
ラベル:セカンドライフ SecondLife